相続と言えば、揉め事が付き物です。
なぜ、揉めてしまうかというと、それは仲が悪いからではありません。
相続手続では、遺産分割をすることになりますが、特に遺産の中に不動産があった場合は分割方法が大変です。
そのため、財産を遺す側が事前に「遺言書」で決めておく必要があります。
遺言書は2つの種類がある
遺言書には大きく分けて、次の2つの種類があります。
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
今回は、自筆証書遺言について、説明していきます。
自筆証書遺言とは
自筆証書遺言は、遺言者がすべて手書きで作成する遺言です。
代筆が出来ないので、必ず遺言者本人がすべて手書きで作成しなければなりません。
一部でも、遺言者本人以外が代筆してしまうと、その遺言は無効になってしまいます。
(法改正によって、現在では財産目録については手書きではなくても認められるようになりました)
自筆証書遺言の要件
自筆証書遺言は、すべて遺言者本人が手書きするだけでなく、次のことが必要です。
- 遺言書の作成日付が記載されていること
- 遺言者の署名があること
- 押印してあること
遺言書の作成日付の記載
遺言書はすべて手書きなので、もちろん作成日付も手書きで記載します。
原則として、年月日を記載します。
●年●月吉日と記載して、遺言が無効になった例がありますので、ちゃんと日付を特定して記載しましょう。
遺言書は日付の新しいものが有効に
遺言書が複数あった場合は、古いものより新しい遺言書、つまり日付の新しいものが有効になります。
遺言書を見直したり、書き直すことは良いことですが、遺言の前後関係に注意して作成しておく必要があります。
遺言者の署名があること
遺言書はすべて手書きなので、もちろん氏名についても手書きで記載します。
氏名については、有名な芸能人であれば別ですが、ペンネームなどは絶対に避けましょう。無効になってしまう可能性があります。
必ず戸籍に記載されている氏名を記載しましょう。
夫婦で同じ1通の遺言書を作成してはダメ
遺言書は、遺言者ごとに1通ずつ作成します。
夫婦で同じ1通の遺言書を作成して、氏名を連名で記載して作成してしまうと、無効になってしまいます。
押印されてあること
遺言書には必ず押印が必要です。
案外知られていませんが、押印する印鑑は「認印」でも大丈夫です。
ただ、できれば「実印」であることが望ましいので、印鑑登録をしている人は「実印」で押印しましょう。
自筆証書遺言のメリット
自筆証書遺言を作成するのに費用はかかりません。
紙とボールペンと印鑑があれば作成できてしまいます。
そして、作成したいときにいつでも遺言書を作成することが出来ますし、いつでも見直しして書き換えをすることが出来ます。
出来れば、作成した遺言書は、封筒などに入れて封印しておくのが望ましいですが、必ずしも封筒に入れていないからといって無効になることはありません。
自筆証書遺言のデメリット
自筆証書遺言は、その内容から不利になってしまう相続人に捨てられてしまう可能性があります。
さらには、本当に遺言者本人が書いたものなのか、揉め事に発展してしまう可能性もあります。
そのため、遺言書の保管については十分注意する必要があります。
遺言書の保管については後で説明しますね。
自筆証書遺言は裁判所の検認が必要!
自筆証書遺言は、そのまま遺言執行をすることが出来ません。
そのため、家庭裁判所に検認の申し立てを行って、裁判官、相続人の立ち合いのもと、遺言書の確認を行います。これを「検認」と言います。
検認は、必ずしも相続人の立ち合いは必要ではありませんので、申立人がいれば検認手続きを行うことが出来ます。
公正証書遺言、法務局で保管されている自筆証書遺言の場合は、検認の手続きは不要です。
遺言書の保管制度
自筆証書遺言は、作成費用が不要で、手軽に書くことが出来る反面、紛失や破棄などのリスクがあります。
そこで、法務局の遺言書保管制度を利用することをおすすめします。
利用する際の注意事項として、次のことがあります。
- 遺言の内容について相談することが出来ないこと
- 保管する遺言書の有効性を保証するものではないこと
法務局で保管された遺言書は、家庭裁判所における検認手続きは不要ですので、そのまま速やかに遺言執行を行うことが出来ます。
遺言書を紛失してしまったり、相続人に破棄されてしまうリスクがないので、保管制度を利用するメリットは大きいと言えます。
遺言の執行
遺言書は作成しただけでなく、最終的に遺言書に書かれてあることが実現されなければ何も意味がありません。
そのため、遺言を実現してもらえるように、「遺言執行者」を指定しておく必要があります。
遺言書に記載する内容についてはどのようなことでも大丈夫だろうと思われがちです。
しかし、実際に実現可能性がどのくらいあるのか、ということを検討しながら遺言書を作成していく必要があります。
ちゃんとした遺言書を作成されたい場合、遺言の専門家、遺言執行者等と相談しながら進めていくのが無難です。
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