保険を売らないFPが、先進医療特約は本当に必要なのか教えます!

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例えば、ひと月に100万円の医療費がかかったとしても、多くの場合、公的医療保険が適用となるため、3割負担で済みます。

しかも、高額療養制度があるので、収入にもよりますが、ひと月あたりの医療費は8万円程度の上限となりますので、それほど医療費の心配はいりません。

では、公的医療保険が適用されない「先進医療」についてはどうでしょうか。

先進医療は、医療保険のパンフレットに必ず掲載されていますが、その必要性について、今一度、検討してみたいと思います。

先進医療とは

先進医療は、厚生労働大臣が定める評価療養の1つとされています。

そして、将来的な保険導入のための評価を行うものとして、未だ保険診療の対象に至らない先進的な医療技術等と保険診療との併用を認められたものです。

先進医療は、「厚生労働大臣が定める高度の医療技術を用いた療養その他の療養であって、保険給付の対象とすべきものであるか否かについて、適正な医療の効率的な提供を図る観点から評価を行うことが必要な療養」

健康保険法等の一部を改正する法律(平成18年法律第83号)

先進医療の費用

先進医療を受けた時の費用は、公的医療保険の適用外なので全額自己負担となります。

先進医療の費用は、医療の種類や病院によって異なります。

先進医療は、令和3年9月1日現在で85種類

先進医療の代表的なもの、技術料が高いものとして、重粒子治療や陽子線治療などがあります。

重粒子治療、陽子線治療の技術料は、およそ300万円

先進医療の実施件数

先進医療の実施件数は意外と少ない

先進医療を代表する重粒子線治療、陽子線治療の年間実施件数は、合わせても2000件に満たないようです。

出所:厚生労働省第93回先進医療会議の参考資料から抜粋

先進医療を実施している医療機関

先進医療は特定の医療機関でしか受けられない

代表的な先進医療として知られている重粒子治療は、全国で6か所の医療機関でしか受けることが出来ません。

また、同様に陽子線治療も全国で18か所の医療機関だけとなります。

これを見ると、人口が集中している東京には先進医療が受けられる医療機関がないというのが分かりますね。

重粒子線治療が受けられる医療機関(令和3年9月1日現在)

先進医療技術名都道府県実施している医療機関の名称
重粒子線治療千葉県国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構QST病院
重粒子線治療兵庫県兵庫県立粒子線医療センター
重粒子線治療群馬県群馬大学医学部附属病院
重粒子線治療佐賀県九州国際重粒子線がん治療センター
重粒子線治療神奈川県神奈川県立がんセンター
重粒子線治療大阪府大阪重粒子線センター
陽子線治療千葉県国立がん研究センター東病院
陽子線治療兵庫県兵庫県立粒子線医療センター
陽子線治療静岡県静岡県立静岡がんセンター
陽子線治療茨城県筑波大学附属病院
陽子線治療福島県南東北がん陽子線治療センター
陽子線治療鹿児島県メディポリス医学研究所 メディポリス国際陽子線治療センター
陽子線治療福井県福井県立病院
陽子線治療愛知県名古屋市立大学医学部附属 西部医療センター
陽子線治療北海道北海道大学病院
陽子線治療長野県社会医療法人財団慈泉会 相澤病院
陽子線治療岡山県津山中央病院
陽子線治療北海道社会医療法人禎心会 札幌禎心会病院
陽子線治療大阪府医療法人伯鳳会 大阪陽子線クリニック
陽子線治療兵庫県兵庫県立粒子線医療センター附属神戸陽子線センター
陽子線治療愛知県成田記念陽子線センター
陽子線治療奈良県社会医療法人高清会 高井病院
陽子線治療京都府京都府立医科大学附属病院
陽子線治療北海道社会医療法人孝仁会 北海道大野記念病院
出所:厚生労働省「先進医療を実施している医療機関の一覧 第2項先進医療技術【先進医療A】24種類、266件」より抜粋

先進医療のまとめ

先進医療の効果は保証されていない

先進医療の費用が高いのは効果が未知数だから

先進医療は、その技術料も高いことから「夢のような最先端の治療で病気を治せる」というイメージを持ってしまいがちですが、それは大きな誤解です。

先進医療が公的医療保険の適用外となっている理由は、今後それを保険診療に含めるべきか否かの評価がまだ確立していない状態、いわば実験段階だからです。

通常、病気の治療を受ける場合、公的医療保険が適用される「標準治療」となります。

それは、それぞれの病気に応じた治療方法が確立されているからです。

一般的に「標準」と聞くと、「普通」というイメージを持ってしまいます。

ですが、医療でいう「標準治療」は、すでに安全性が確認されていて、科学的根拠に基づき、現時点で最も効果が高い治療のことをいいます。

繰り返しになりますが、先進医療は、公的医療保険の適用対象として広く普及させるかどうかを評価している途中で、試験的に導入しているに過ぎないので、治療効果が高いと言い切れないのです。

先進医療特約の必要性について

医療保険、がん保険などの保険会社のパンフレットに必ず「先進医療特約」が書いてあります。

それを見ると、がん治療はほとんどの場合、先進医療が必要で、しかも費用が高いという印象を受けますが、保険としての必要性はどうでしょうか。

必ずしも、正解があるわけではないので、このように2つの考えがあると思います。

  1. 先進医療は、受けられる確率が低く、治療効果の保証がないので必要ないと考える
  2. 医療保険に入ることが前提で、先進医療特約の保険料が100円、200円と安いので万一のために必要と考える

保険適用となる先進医療も

先進医療は、毎年件数が異なります。

それは、治療効果が認められず先進医療から外される技術があったり、新しく認可される技術もあるからです。

そして、先進医療の中から治療効果が認められ、公的医療保険を適用対象とすることが適切と判断されて、保険適用となるものもあります。

原則として、先進医療に対して神経質になる必要ないと思いますが、先進医療は、主にがん治療で実施されることが多いので、心配な人は、がん保険に先進医療特約を付加してもいいかもしれませんね。