医療保険って、やっぱり必要だよね、もし入院したら、差額ベッド代とか必要になるから・・・
と、医療保険をファイナンシャルプランナーに勧められたり、自分でそう思い込んでしまっていませんか?
今回は、私の家族の入院をきっかけに「差額ベッド代」が問題となったので、その支払義務についてお伝えします。
差額ベッド代は健康保険適用にならない
個室、特別室(特別療養環境室)は、患者が希望すれば入室できます。このとき、必要となるのが「差額ベッド代」(特別療養環境室料)です。
差額ベッド代は、特別療養環境室料といい、患者の入院環境の向上を図り、患者の選択の機会を広げるものとして認められたものです。
そのため、差額ベッド代は、健康保険(公的医療保険)で支払われる入院料とは別に、患者の自己負担となります。
その負担が大きいことから、ファイナンシャルプランナー(保険を売る保険募集人)は、医療保険の必要性を訴えてきます。
差額ベッド代は、患者が希望して入室した場合に請求される料金となりますので、健康保険の適用外となるため全額自己負担となり、高額療養費制度の対象にもなりません。
そのため、1日あたりの金額が3万円、4万円・・・となってくると、その負担は計り知れませんので、要注意です。
「患者が希望すれば」入ることが出来ますが、逆に「希望しなければ」支払は不要なので、その判断は慎重に!
差額ベッド代は、患者への説明と患者の同意が必要
個室、特別室は、患者が希望すれば入院することができます。
ただ、病院側は、個室、特別室に入院を希望する患者に対し、差額ベッド室の設備、構造、料金などについて明確、かつ丁寧に説明し、患者の同意を確認しなければなりません。
差額ベッド代の支払義務がない場合
前述のとおり、差額ベッド代は、患者が自ら個室を希望した場合に支払う費用となります。
そのため、病院側の都合や医師の判断で、「患者が希望していない」にもかかわらず個室に入院した場合は差額ベッド代を支払う必要はありません。
病院側の説明と患者の同意が欠けている場合
個室、特別室に入院した場合でも、必ず差額ベッド代を支払わなくてはならないわけではありません。
原則として、病院が患者に対し、差額ベッド代を請求するためには、十分な説明と患者の同意が必要となります。
具体的には、このようなことが求められます。
- 病院内の見やすい場所(受付窓口、待合室など)に、個室、特別室について、そのベッド数や料金を患者にとって分かりやすく掲示しておくこと。
- 個室、特別室の入院を希望する患者に対しては、その設備構造、料金などについて明確かつ丁寧に説明し、患者側の同意を確認のうえ入院させること。
- 患者の同意確認は、料金などを明示した文書に患者側の署名を受けることにより行うものであること。なお、その同意書は、病院が保存し、必要に応じ提示できるようにしておくこと。
逆にいうと、このようなことがちゃんとされていなければ、病院側の説明が十分とは言えず、患者の同意も得られていないということになり、患者は差額ベッド代を支払う必要はないと言えます。
治療上の必要性により入院した場合
例えば、このような場合、「治療上の必要」による入院と認められ、差額ベッド代の負担は必要ありません。
- 救急患者、術後患者等であって、病状が重篤なため安静を必要とする者、又は常時監視を要し、適時適切な看護及び介助を必要とする者
- 免疫力が低下し、感染症に罹患するおそれのある患者
- 集中治療の実施、著しい身体的・精神的苦痛を緩和する必要のある終末期の患者
- 後天性免疫不全症候群の病原体に感染している患者
- クロイツフェルト・ヤコブ病の患者
病棟管理の必要性など、実質的に患者自身の選択によらない場合
さらに、このような場合でも、病院側は差額ベッド代を請求してはならないとされています。
- 個室、特別室以外の一般病室(多床室)の病床が満床であるため、個室、特別室に入院させた場合
- 医師が他の入院患者の院内感染を防止するため、実質的に患者の選択によらず入院させたと認められる場合
差額ベッド代に関する厚生労働省からの通知
差額ベッド代に関しては、次のとおり厚生労働省より通知が出ています。
まとめ
私の家族のケース(コロナ陰性と検査結果があるにもかかわらず、潜伏期間3日間は個室に入院、その費用は患者の自己負担)と同じようなことは日常茶飯事かもしれません。
入院、手術を希望するのであれば、個室・特別室への入院が条件であるかのように選択を迫られたり、その他、個室・特別室に移らないのであれば、退院や転院をするよう勧められたり、それでも望む治療を受けるため、やむを得ず、差額ベッド代の支払いに同意せざるを得なくなったというケースは決して少なくないと思われます。
治療を受ける「患者の立場」として、とても難しいかもしれませんが、納得できない場合は、「それでも希望しません」などと拒否の意思を示すか、後日早々に意思(瑕疵ある意思表示)として撤回して、病院側に相談しましょう。
もし、それでも解決が難しい場合は、厚生労働省(担当する地方厚生局)に相談してみましょう。